絶滅危惧植物の保全に関する研究

(1)新潟県絶滅危惧植物の保全に関する研究

新潟県に自生する植物約3,000種のうち,350が絶滅の危機に瀕しており,すでにムジナモは絶滅(野生・栽培下共),デンジゾウおよびツルスゲは野生絶滅という危機的な状況下にあり,早急な保護が必要な状況です.
当園ではその生育特性や生活史に関する研究を行い,これらの成果を生かして,地域の方々と共にオキナグサ,ミズアオイ,クルマユリ,ヒメサユリ等の自生地保全を進めると共に,絶滅危惧植物展やシンポジウムや保全技術講習会の開催,学校教育等を行っています.
2006年8月より新潟大学超域研究機構の生物多様性研究プロジェクトにより行われている水田に生育する植物の定量的評価研究に協力しています。また,平成20年度には,当園のオキナグサの保全活動が,環境省の生息域外保全モデル事業(地域の協働参画モデル)として選定され,今後中越大震災で被害のあった地域での保全事業が行われる予定です.

【論文・著書・学会発表】
2006.久原泰雅、西川恒彦.新潟県内におけるフクジュソウ属(Adonis)の分布と保全のあり方について.新潟県植物保護39:14-16.新潟県植物保護協会.
2006.久原泰雅、高橋善輝、田村和人.2006.新潟市海老ヶ瀬地区におけるミズアオイの保全の取組みについて.新潟県植物保護 40:8-11.新潟県植物保護協会.
2007.石高和弘、久原泰雅.新潟県に自生する水生タヌキモ類の分布(その1).新津植物資料室年報2006:32-37.積雪地域植物研究所(新津植物資料室).
2007.紙谷智彦、石田信也、久原泰雅.水位の異なる休耕田に出現した植物種.日本生態学会松山大会.ポスターセッション.日本生態学会
2007.久原泰雅丸山真也倉重祐二.2007.全国の植物園の生物多様性保全への取組み 新潟県立植物園.日本の植物園における生物多様性保全:292-295.社団法人 日本植物園協会、国立科学博物館 筑波実験植物園、植物園自然保護国際機構.

(2)本邦の絶滅危惧種に関する研究

平成19年8月に環境省から発表された維管束植物のレッドリストには,絶滅のおそれのある種(亜種を含む)の総数は1,690種となっています.これは,日本全土に自生する約7,000種の植物の1/4が絶滅の危機に瀕しているという状況を示しています.
絶滅危惧植物と聞くと高山植物や珍しい植物を思い浮かべるかも知れませんが,実際には,湿地や里山など人間の生活の影響が大きい場所の方がより深刻な状況となっています.
当園では平成18年度から(社)日本植物園協会の植物種多様性拠点園(日本全体でネットワークをつくり,保全を進めていく事業)の北陸地域の拠点として全国の中心となって絶滅危惧植物の保全に取り組んでおり,現在国内の絶滅危惧種のうち63種を収集,保全しています.

【論文・著書】
2002.Kuhara, T., T. Sugawara..Floral and pollination biology of two gynodioecious herbs, Dianthus shinanensis and D. superbus (Caryophyllaceae).Acta Phytotax. Geobot. 53 (2): 161-171.
2007.石田源次郎、岩科司、小西達雄、倉重祐二、老川順子、遊川知久(編).日本の植物園における生物多様性保全.社団法人 日本植物園協会、国立科学博物館 筑波実験植物園、植物園自然保護国際機構.
2007.倉重祐二.日本の植物園における種子交換と保存(Exchange and storage of seeds in Japanese botanical gardens 和英文併記).日本の植物園における生物多様性保全:152-160.社団法人 日本植物園協会、国立科学博物館 筑波実験植物園、植物園自然保護国際機構.

(3)自然関連団体の情報収集

効果的に植物の保全を進めるためには,地域で保全活動を行っている団体等と協力することが必要となります.そのため,当園では平成15年度より新潟県内の植物に関する分布や生育環境,保全団体等に関する情報を収集しています.平成19年度までに17団体の活動状況報告や会報,全1,648タイトル(内植物に関するものは702)を収集し,これらの団体の活動状況を「植物園だより」や絶滅危惧植物展で公開しています。

*下線付き氏名は当園の職員です。