冬の室内を華やかに飾るアザレア、春を彩るチューリップやボケ、シャクナゲ、ボタンやシャクヤク。新潟県はこれらの植物の全国有数の生産地として知られています。また、皆さんが栽培されている植物の中には、県内で品種改良された植物も数多くあります。
江戸中期に萌芽した本県の花卉生産は、明治末期から大正に発展し、昭和初期に花開き、「東洋の花園」と呼ばれるほどの成長をみせました。これには植物の栽培に適した新潟の気候風土があったことはもちろんですが、他に先駆けて行った新品種の導入、生産技術の革新、品種改良などの先進的な取り組み、また呼び売りや行商から生産組合へと組織化されていった販売形態、それと共に近隣から県内、全国から海外へと拡大した販路など先人の並々ならぬ努力がありました。
このような長い歴史の中で、近代においては、明治時代の本県に端を発して全国に流行したヤブコウジとシャクヤクにボタンを接ぐ技術の開発、大正時代の日本ではじめてのチューリップ球根の商業生産とボケの流行、昭和初期の全国的なブームとなったシュンランをはじめとするカラタチバナやマンリョウなどの古典園芸植物の栽培、また西洋シャクナゲの品種名の和名への改称などは本県園芸の特筆されるべき事柄だといえるでしょう。
これらの歴史を残すべく新潟県立植物園では、県内で育成された植物を収集すると共に、書籍やカタログ、名鑑(番付)、写真などの園芸資料の収集を行っています。また、温室内で行われている展示では、本県の園芸に縁の深いシャクナゲ、アザレア、チューリップ、古典園芸植物の展示を通じて新潟の園芸文化を紹介すべく努めています。
それでは、新潟県立植物園でこれまでに収集した資料をもととして、次回から江戸から昭和の本県の花卉園芸文化史を紐解いていくこととしましょう。
チューリップの切花生産は新潟県が日本一
本間正信さん作出のアザレア‘ロマンスパール’
樋口昭男さん作出のシャクナゲ‘貴婦人’